少年が道でひろったそれは突然口をきいたのだった
「おいおまえ、なんか不満があるんだろう?」
度肝を抜かれた少年はそのままそれを道へ放り投げたが
それはさらにこう言った
「不満があるなら俺に言えよ」
少年はあたりを見回し それをポケットに詰め込んだ
誰にも見つからないように
ポケットをギュッと手でおさえ、バスに揺られて少年は家路に着いた
部屋に入りポケットからそれを取り出そうとしたが
それはすでに少年のポケットのなかで
踏み潰されたトマトのように
まるでカタチをとどめてはいなかった
ドロドロになったそれをてのひらですくったりしているうちに
少年の胸はむかむかと怒りを覚え それにむかってこう言った
「おまえは弱虫だった」
ぐちゃぐちゃに潰れたそれはぐちゃぐちゃなのにそれでもニヤリと笑い
「そうだろ?おまえだよ」
とつぶやき、それっきり黙ってしまった
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